テクノロジーはいかにして学生たちを支援するか
数学は、私たちの世界全体にとっても、学生たちの将来の大成のためにも重要なものです。だからこそ、教育者の皆さんは、生徒たちが数学を理解し、使いこなせるようにするために、たゆまぬ努力を続けているのです。重要でやりがいのある仕事ですが、クラスの規模が大きくなり、気が散ることが増え、学習の遅れの影響が続くと、特に難しくなる仕事でもあります。しかし幸いなことに、適切なテクノロジーがあなたのアシスタントとなれば、教育にかけた時間やエネルギーに対してより大きな成果を還元し、生徒の成長を支援することができます。
このホワイトペーパーでは、数学や、工学、物理学、化学、経営学、経済学などの数学を扱う学問を教える講師が直面しがちな、よくある7つの課題について検証します 。それぞれの課題に対し、MaplesoftのソフトウェアソリューションであるMaplesoft Mathematics Suiteが、知的好奇心を刺激するビジュアライゼーション、その場でのフィードバック、モチベーションを高めるような例題、操作することのできる数学探査やその他様々なサポートを提供することで、課題を克服するのに役立つということがわかるような用例を紹介していきます。用例の説明には、Suiteの様々な製品のスクリーンショットやショートビデオを使用しています。これらや類似の事例についてさらに詳しく知りたい方は、ウェビナー「Math Matters, So How Can you Help Your Students Succeed?」をご覧ください。*
数学教育に関しては、教えているのが数学であるのか、数学を扱う学問であるのかにかかわらず、教育者は次のような7つの課題に遭遇しがちです。
こうした課題は、授業のために多くの時間を費やすことで解決できるものではありません。そもそも時間は簡単に捻出できるわけでもないでしょう。しかし、数学テクノロジーであれば、このいずれにも役立つことができます。
学生は、授業中であっても様々なものに意識を向けがちです。携帯電話やノートパソコンには、学生の注意を誘いやすいようにデザインされたものが様々に表示される一方、多くの学生にとって、「方程式の群れ」は、必ずしも興味を引くものではありません。
しかし、数学は生き生きとしたものにすることができます。視覚に訴えるものや、インタラクティブなものにすることもできます。それをいじくりまわして何が起こるかを確かめるのも楽しいでしょう。時には、その可能性で生徒のやる気を引き出すこともできます。しかし、そのためには、物言わぬページではないものが必要です。知的好奇心を刺激するようなビジュアライゼーションや、有意義なインタラクティビティを備えたダイナミックなものが必要となるのです。
こちらは幾何学的な変換の例です。生徒たちが自分で図を反転や回転、拡大させ、その結果をその場で確認することができます。例えば、図形を作成してX軸やY軸で反転させたり、スライダーを動かして図形を水平方向やと垂直方向に移動させたり、別のスライダーで拡大させる係数を設定して結果を確認したりすることができます。
学生たちはしばしば回転体をイメージするのに苦労するため、教師たちはその概念を伝えようと悪戦苦闘してきました。この例では、2次元の曲線が回転して3次元の立体になる様子を見ることができ、さらに出来上がった立体を自分で回転させて、さまざまな角度からじっくり見ることができます。円柱がどのように立体を近似しているかを確認したり、円柱の数を増やして、近似度がどのように向上するかを視覚的、数値的に確認したりすることができます。
あなたのクラスでも、「でも、これって何の役に立つの」というようなことを様々な言い回しで言われてきたのではないでしょうか。幾人かの生徒は、ただ数学のために数学の学習をすることを楽しんでいるかもしれませんが、ほとんどの生徒は、あなたが教えていることをなぜ学ぶ必要があるのだろうと思っているでしょう。一体何のために?どうして全員が勉強しなければならないのか?
もちろん、数学はあらゆるところで使われていますし、現実世界への応用は生徒のモチベーションを高めるのに有効です。けれど残念ながら現実の例のほとんどは、授業中に手作業で解くにはあまりにも複雑で、しかも生徒がまだ学習していない数学が含まれていることさえあります。しかし、然るべきテクノロジーを使えば、計算で頭を悩ませることなく、学習しようとしている概念の応用例を生徒に示してあげることができるのです。
フーリエ変換や高速フーリエ変換は、面倒な操作が多そうに思えて、その重要性を学生が具体的に感じられるように伝えるのは難しいかもしれません。しかし、ほとんどの生徒は、どこかでにごった音のするオーディオを聴いたことがあるはずです。この例では、生徒が自分で用意したオーディオファイルからノイズを除去するための有限インパルス応答(FIR)フィルタを設計します。生徒たちは、計算をせずにさまざまなフィルタの種類や設定を試すことができ、その結果を自分で見たり聞いたりすることができます。最終的に生徒たちは、信号からノイズを除去することの意味をより直感的に理解し、特性の異なる信号に対しては種類の異なるフィルターが必要であることを体験して、概念的な理解を深め、その背後にある数学を学ぶモチベーションを得ることができます。
始まる前から不安やストレスを感じながら授業に臨む生徒がいます。数学への不安が彼らの学習能力を阻害しているのですが、このような生徒に特別なケアを行うには、一週間の中で十分な時間を確保することができません。しかし、テクノロジーを使えば、次のようにして彼らの自信を向上させる手助けができます:
生徒は、紙の上で積分を解きます。それから数学ツールで解答を確認し、自分の解が正しければ、安心して不安が少し和らぎます。けれどもし自分の答えが不正解だったら、数学に不安を抱く生徒は、自分が「わかっていない」だけだと思い込み、不安や自信喪失が強まってしまいます。しかし、そこで終わりにするのではなく、携帯電話の数学アプリを使って自分の解答を写真に撮り、オンラインツールに解答全体をアップロードします。そして、ツールに解答の一行一行をチェックしてもらい、どこで間違えたのかを明らかにすることができるのです。こうすることで、学生は、どこを間違えたのか、どこまで正しくできたのかを確認することができます。小さなミスであれば、自分の概念的な理解に対する自信を取り戻すことができます。誰かに学習を助けてもらう必要が生じた場合も、より的確な質問ができるようになり、教師や友人、その他の支援者が迅速にサポートしやすくなり、生徒が不安を感じる時間を短くすることができます。
数学に不安を抱く生徒は、回答を間違うたびに、自分が何も理解できていないのだと考えてしまう傾向があります。概念への理解を計算とは分けて練習できる機会を与えてあげれば、単純なミスに由来する不要な不安を抱かせずに、重要な考え方をより確実に身に着けさせることができます。また、生徒がどれだけ理解できているかを示すことで、後でマイナス記号が消えても冷静に対処できるようになります。この例は、生徒が微分・積分のルールを練習し、それぞれの手法を適用すべきタイミングを理解することに焦点を当てたツールです。生徒がどのステップを適用するかを選択し、実際の計算はツールが行うので、生徒はより高いレベルの問題に対して解き方を理解することに集中することができます。また、生徒が間違えた場合は、チューターがヒントを提供し、生徒はヒントや次のステップを尋ねることができるため、完全に行き詰まって落ち込んでしまうことはありません。
授業で習ったことを真似ることはできても、自分が何をしているのか、なぜそうなるのか、まったく理解できていない生徒がいます。ステップを踏んで答えに辿り着くことはできるものの、それはただ動作を繰り返しているに過ぎません。問題の種類を少し変えてしまえば、その生徒は気づかなかったり、何をすればいいのかわからなかったりします。生徒たちには、アルゴリズムをやみくもに適用するのではなく、自分が何をしているのかを実際に理解してほしいのです。
多くの場合、理解という目標を達成するためには、ステップの背景にあるコンセプトを視覚化させることが有効であり、テクノロジーはそれを支援することができます。
このアプリケーションでは、生徒は、与えられた図形の面積を表す公式の背後にある幾何学的な構造をアニメーションで見ることができます。一見ランダムな公式の数々を暗記するのではなく、その公式がどこから来ているのかを確かめることで、公式を覚えやすくなり、さらに高度な問題に取り組むためのテクニックも身につけることができるのです。
微分方程式を解く手順を追うことと、実際に何が起こっているのか、なぜ一般解と特殊解があるのかを「理解」することは全く別のことです。この例では、生徒は選んだ微分方程式の方向場、特定の点での方向を示す矢印、その点を通る近似解の軌跡がどのように矢印に従うかを見ることができます。異なる点を選んで、その都度ベクトルと解がどのように変化するかを実験することもできます。このような探求を通じて直感的な理解を深めることは、さらなるスキルを身につけるための強力な基礎となります。
概念的な理解を促すビジュアライゼーションも重要ですが、生徒が力を奮って問題を解いていくことも必要です。たくさんの問題を解くのです。しかし、教科書に載っている解答付きの問題は数が限られており、生徒によっては十分な練習にならないことが非常に多いのです。
然るべきテクノロジーを使えば、生徒たちは無尽蔵にある練習問題にアクセスでき、必要な分だけ練習することができます。ツールは、生徒が正しいかどうかを教えてくれるので、彼らはスキルを身につけながら自信をつけることができます。加えて、彼らがどこで間違ったのか、どうすれば修正することができるのかを理解することを支援できるツールもあります。
この例では、積と商の法則を適用して導関数を求めるという、非常に特殊なスキルを練習できるようにデザインされた一連の練習問題を、ツールが生成してくれます。生徒はまず紙で問題を解き、次にスマホの数学アプリで写真を撮ってツールにアップロードし、「Check Work」をクリックします。ツールは解答の各行を確認して、この場合は最後の2番目のステップでミスがあったことを示しています。生徒は、法則は正しく適用できたものの、導出過程で算術的なミスをしたことを把握します。生徒は、その間違いをドキュメントで修正し、もう一度確認した後、次の問題に進みます。生徒はヒントを求めることもできますし、インストラクターが許可しているので、理解を助けるために別の例が必要な場合は、解答全体を見られるよう要求することも可能です。
このドキュメントは、連続確率変数の期待値を求める練習のできる問題を生成し、答えを確認することができます。生徒はまず、手作業による解き方のステップとツールによる計算を組み合わせて、ドキュメント内で解を求めます。このケースでは、講師は完全な解答を見られるオプションは付けませんでしたが、ヒントは許可しました。
最近では、生徒が内容を理解しているかどうかにかかわらず、標準的な「これを解きなさい」というタイプの問題の答えは簡単に得ることができます。概念的な問題を解くことに焦点を当てた課題やプロジェクトを与えることで、生徒の学習状況をよりよく把握することができます。このようなプロジェクトでは、仮説の検証、視覚化、説明の記述、自力で解けるようにしたい計算、自力で解けなくても構わない計算が組み合わされていることがよくあります。然るべきテクノロジープラットフォームは、生徒たちが答えを調べただけでは対応できないような興味深いプロジェクトを設定するために必要な環境を提供します。彼らは答えを調べる代わりに、考え、質問し、コミュニケーションし、学習する必要があるのです。
このプロジェクトでは、回転体がワイングラスや花瓶のように見える区分関数を考えることに挑戦します。生徒たちは、さまざまな上限や下限の関数を試し、その結果を見ることができます。彼らはすぐに、望んでいる立体を得るためには関数をどのように変更する必要があるかを考え始めます。
また、講師は器の容積の最大値や最小値の条件を設定することができ、生徒たちはソフトウェアを使って、それぞれの形状の容積を示す積分を設定して解き、さらにその関数を調整してグラスや花瓶を洗練させていくことができます。また同じ環境の中で、講師は生徒たちに、振り返りや思考過程を述べるような質問に答えさせることができます。
生徒たちは、さまざまな背景を持ち、さまざまな準備態勢でクラスにやってきます。準備不足の生徒が他の生徒に追いつき、成功するのを助けたいのですが、すべての生徒に個別のサポートをする時間はありません。また、上級の生徒に対しては、彼らへの対応を考えずとも、常に挑戦してもらい、彼らの能力や教科への関心を高めていってもらいたいものです。もしさまざまなトピックやレベルをカバーできる、既製のインタラクティブコンテンツの優れたリポジトリがあれば、さまざまなニーズを持つ生徒が、自力での学習に役立つ教材にアクセスすることができます。また、コンテンツを簡単にカスタマイズできるようになれば、それを出発点として、自習用、教室での実演用、プロジェクト用など、より的確にターゲットを絞ったリソースを開発することができます。
Maplesoft Mathematics Suiteのソリューションを使用する学生を支援するコンテンツやツールとして、次のものがあります。
お客様の授業からサンプルとなる教材をお送りいただければ、Maplesoft Mathematics Suiteがどのように学習を生き生きとさせるかをお見せします!
また、当社の専門スタッフがデモンストレーションを行い、質問にお答えして、お客様やお客様のクラスに最適な製品を選ぶお手伝いもします。
このホワイトペーパーで紹介しているすべての例は、Maplesoft Mathematics Suiteを用いています。この製品群は、オンライン、モバイル、デスクトップの数学テクノロジーを提供し、数学的問題の探求、視覚化、解決を極めて容易にします。いずれも、教育のさまざまな段階にある生徒たちのニーズにあうように設計された、使いやすいインターフェースを通じて、世界で最もパワフルな数学エンジンにアクセスすることができます。
Maplesoft Mathematics Suiteは、高校から大学院まで、以下のような分野をサポートします。