電気・電子系エンジニアの役割は特徴的です。とりわけ、数学的な知識を多く求められる困難な技術的課題によく直面します。
数学ソフトウェアやスプレッドシートは、分析の中核となる計算をサポートするためによく使われます。しかし、計算は、単に個別の数学の演算を集めたものではありません。電気・電子系エンジニアには、以下のような事柄が求められます。
基本的に、計算は構造化および管理された環境に存在する必要があります。
このホワイトペーパーでは、電気・電子系エンジニアが、 どのようにMaple™ を使って、個別の解析の再利用、共有、そして拡張可能な資産に変換し、計算管理をしているかを検証します。
ここでは、計算の実行、文書化、および展開するための Maple の機能の紹介から始めます。次に、いくつかの典型的な電気工学における応用例について説明します。
Maple ドキュメントは、数式、テキスト、画像、およびプロットを1つのドキュメントにまとめたものです。Maple は計算だけでなく、解析の背後にある仮説および思考プロセスも記述することができます。
Maple は設計意図を捉え、計算を再利用、共有、および拡張可能なドキュメントにまとめます。
図1. ドキュメントインターフェース
Maple は、数値および記号数学、データ分析、およびプログラミングのためのハイレベルで実用的なツールを備えています。これらのツールは、エンジニアが抱えるシンプルな課題と複雑な課題の両方に対応できるよう設計されています。
例えば、Mapleは、電気回路の解析で決まって発生するスティフな微分方程式を解くことができます。
記号的な数学エンジンと数値的な数学エンジンはシームレスに接続されており、パラメータ、方程式、計算に関して、両方のエンジンを必要に応じて、いつでも切り替えて使うことができます。これは、ひとつのワークフロー内で方程式を導出し、数値的に評価できることを意味します。
さらに、Maple のプログラミング言語はインタラクティブな開発環境の恩恵を受け、Maple のハイレベルな数学ツールを使い、コードを作成できます。
図2. 電圧が印加された LRC回路からのスティッフな微分方程式e
抵抗、電圧、長さなど、電気・電子系エンジニアが必要とするほぼすべての量には単位があります。
単位は Maple に流動的に統合されており、簡単な計算だけでなく、方程式の数値解法、最適化、可視化にも使用できます。
計算に単位を用いることで、単位変換の誤りが発生するリスクを排除し、式の物理的な妥当性をチェックできます。
図 3. 単位を含む計算
図 4. オーディオのインポートとスペクトログラムの生成
スプレッドシート、テキストファイル、オーディオデータ、その他多くのファイル形式のデータのインポートとエクスポートが可能です。
また、Maple は、外部で定義されたコード(例えば、外部ソルバやDLL で定義された独自のデータソース)を呼び出すことができ、専用のプロセスシミュレーションツールに接続することもできます。
一部の電気・電子系エンジニアは、Maple を使用して SPICE のネットリストを自動で数式に変換しています。
図 5. 1極フィルタのネットリストの伝達関数への変換
Maple は、幅広い分野にわたるビルトインされた可視化機能を持っています。以下は、それらのプロット機能の一部です。
これらの可視化はカスタマイズ可能です。 また、新しいプロットのタイプをプログラムで生成することもできます。
図 6. アレイアンテナの指向性の極座標プロット
アプリケーションは、計算実行可能なまま、パスワードで保護することができます。これは、知的財産を守りながら、計算アプリケーションを配布できることを意味します。
アプリケーションは、Maple Player™を使用してインタラクティブなデスクトップツールとして無料で配布したり、ウェブ上で展開したりできます。
さらに、Maple は、ユーザーが開発したプログラムを C 言語、Python®、Java®、その他の言語に変換できます。
図 7. アンプのゲインを解析する展開可能なアプリケーション
ここでは、電気・電子系エンジニアが一般的にMapleをどのように使用しているかを紹介します。それぞれの応用例ついての簡単な説明と、応用例で使用されているMapleの機能について説明します。
ある電気系エンジニアは、X バンドピラミッド型ホーンの最適な設計パラメータを計算したいと考えていました。このエンジニアは,パラメータと方程式を Maple に入力し,結果として得られたシステムを数値的に解きました。
図 8. ピラミッドホーンの設計
タスク | Maple の機能 |
---|---|
ピラミッドホーンの幾何学的制約を記述する方程式を設定する | 2-D math 表記、単位 |
光の速度の抽出 | ビルトインの科学データ |
最適な設計パラメータの探索 | 数値計算ソルバ |
E面(電界面)放射パターンの可視化 | 極座標プロット |
支配方程式には数桁のオーダーで変化するパラメータが含まれており、解くのは困難です。しかし、Maple の数値ソルバは簡単に方程式を解くことができました。
図 9. ピラミッドホーンの E面(電界面)放射パターン
電気系エンジニアは、ウェブベースの同軸伝送線路用アプリの開発を任されました。具体的には、ユーザーが最適な誘電体材料とワイヤサイズを決定するのに役立つアプリが必要でした。
図10. ウェブベースの同軸伝送線路の設計
タスク | Maple の機能 |
---|---|
同軸ケーブルの寸法と位相速度を求めるMapleアプリケーションの開発 | プログラミング言語、ユーザーインターフェースコンポーネント、数値方程式ソルバ |
自由空間の透磁率と誘電率の値 | ビルトイン科学データ |
Maple アプリケーションのウェブ展開 | MapleNet™ |
順方向の電流(If)と電圧(Vf)の実験値から、電気系エンジニアは太陽光発電ダイオードのパラメータ値を推定する必要がありました。光起電力ダイオードの陰的な方程式は、回帰を行う前に再整理する必要がありました。これには、Maple のようなハイレベルなツールでのみ利用可能な特別な関数が使用されていました。
図 11. 太陽光発電ダイオードの方程式の再整理
タスク | Maple の機能 |
---|---|
実験データのスプレッドシートとMapleワークシートを1つのファイルにまとめる | ワークブックファイル形式 |
ランベルトのW関数を使用して、電圧に関して電流を与えるために、太陽光発電ダイオードの式を整理する | 自然な数学表記 記号数学 |
ボルツマン定数と電子の電荷 | ビルトイン科学データ |
最適なパラメータを見つけるための実験データの再調整 | カーブフィッティングと最適化 |
実験データと最適な曲線のプロット | プログラミングによる可視化 |
図 12. 太陽光発電ダイオードのパラメータ推定
計算は私たちの周りの設計された世界を形作っています。計算は尊敬に値するものであり、それに応じて管理する必要があります。
Maple は、設計意図を捉えた独自の計算環境や、ハイレベルの数学ツールを提供するだけでなく、費用対効果の高い展開方法も提供しています。
Maple は電気・電子系エンジニアが計算を管理するのに役立ちます。これにより、個別の分析だったものを、クライアントや共同研究者と再利用、拡張、共有できる構造化された資産に変換します。