ハードウェア、ソフトウェア、オペレーター・イン・ザ・ループアプリケーションを扱う場合、システムモデルは、要求された結果をもたらすための詳細度を持ち、かつリアルタイムプラットフォーム上において、シミュレーションのタイムステップ以内で計算実行できることが重要です。
MapleSimは、モデルの忠実度とリアルタイム性能のトレードオフに関する課題を解決します。
エンジニアは、MapleSimまたはMapleSimのアドオンコネクタによって、互換性のあるコード生成先に複数の選択肢を持つことが可能です。MapleSimの最適化されたコード生成についての詳細は、こちらをご覧ください。
MapleSimのシミュレーションコードは、高速でロイヤリティフリー、計算効率が高いため、新しい製品開発における幅広い用途に最適です。
MapleSimは、可能な限り最速のシミュレーション実行時間を実現するために、30年以上の研究開発で培った次世代の記号計算技術を2段階のプロセスで適用しています。
STEP 1
MapleSimは、数値シミュレーションの際に、他のツールでは失敗するような複雑なシステムに対しても。インデックスリダクション、微分消去、独立システムの分離、冗長システムの除去などの記号的簡単化(Simplification)を適用しています。 これらの簡略化によって、モデルの忠実度が変化することはありません。
STEP 2
MapleSimは、次に記号的最適化を行い、方程式のコンパクトな内部構造を利用して、非常に効率的なコードを生成します。
この処理は、計算効率の高いモデルと、より高速なコードを生成します。これはHIL(Hardware-in-the-Loop)において特に重要で、エンジニアはリアルタイム性能を維持しながら、より詳細なモデルを開発できるようになります。
MapleSimのシンボリックモデリングエンジンは、システム方程式の自動生成から複雑なシステムのリアルタイム製品テストまで、ほとんどのシミュレーションツールでは実現できない多くのメリットを提供します。
下記の自動車の事例データは、MapleSimの簡単化および記号最適化の処理を経て、計算効率が劇的に向上したことを示しています。
例として、設計エンジニアが MapleSim を使用して、空圧タイヤを装着した新しいシボレーのスポーツ用多目的車(SUV)のフルビークルマルチボディモデル(22自由度、26状態空間変数)を開発し、(サードパーティのツールを使用して)dSpace シミュレータにモデルを書き出しました。性能の低いシミュレータ(1GHzのPowerPC)でも、63µsのモデル更新レートを達成しました。これは、最も一般的な既存ツールより、少なくとも16倍速い速度でした。
最新のスマート製品や機械は、大量のセンサーデータを活用しながら動作するように作られています。AIの応答を学習させる場合、製品に膨大な数のシナリオを与える必要があります。
MapleSimモデルは、製品テスト時に入力として使用するデータのサブセットを効率的に生成することで、ニューラルネットワークのテストとトレーニングを高速化することができます。
MapleSimで生成されたテストデータは、さまざまな業界で活用されています。例としては、次のようなものがあります。
アイシン・エィ・ダブリュでは、オートマチックトランスミッションの開発を加速させるため、HIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレーションを多用しています。HILシミュレーションに用いるプラントモデルは、設計者にとって重要なシステムダイナミクスの側面を正確に表現するために、十分に高い忠実度が要求されます。同時に、これらのモデルは、リアルタイム実行を可能にするために、低い計算コストが要求されます。アイシン・エィ・ダブリュは、HILシミュレーション用のリアルタイムなギヤトレインプラントモデルを作成するソフトウェアを評価した結果、MapleSimモデリング・シミュレーションソフトウェアとDriveline Library を選択しました。
MapleSim Driveline Libraryは、トランスミッションメーカーや自動車メーカーが、制御やシミュレーション用のプラントモデルを簡単に作成できるように設計された、特別なコンポーネントセットを提供しました。このモデルは、クラッチ、ブレーキ、およびさまざまなギアを含むように作成されました。MapleSimは、記号計算の力を借りて、複雑なシステムをリアルタイムでシミュレーションする際に重要となる、非常に高速なコードを生成しました。
MapleSimがトランスミッションプラントモデルから生成した、最適化されたCコードにより、アイシン・エィ・ダブリュはより詳細なHILシミュレーションを行うことができました。とある事例では、MapleSimで生成されたS-Functionコードは、類似ツールで生成されたS-Functionと比較して2倍の速度で動作することが示されました。MapleSimの既存コンポーネントライブラリを活用するだけでなく、ユーザ独自のカスタムコンポーネントも容易に開発できました。MapleSim は、忠実度の高いモデルを短時間で作成でき、プロジェクトの成功に重要な役割を果たすことができました。
ハイブリッド自動車や電気自動車の最も重要な部品の1つがバッテリーです。バッテリーの挙動と、他の部品とバッテリーの物理的な相互作用の両方を適切にモデルに反映させるためには、バッテリーの優れた仮想モデルを持つことが不可欠です。
NSERC/トヨタ自動車による研究(Maplesoftの支援)では、地形やパワーコントローラの違いによるモーター状態の変化に対応する、バッテリーを含む詳細な車両モデルが必要でした。彼らは、MapleSimの記号的アプローチにより、従来のモデリングツールで作成したモデルと比較して、Hardware-in-the-Loop(HIL)テスト用の高速リアルタイム性と非常に高い忠実度を持つシミュレーションモデルを作成することができたため、MapleSimを選択しました。
また、MapleSimはハイブリッド自動車(HEV)のマルチドメインモデルの開発にも使用され、自動生成の最適化された支配方程式を含んでいます。HEV モデルは、平均値の内燃機関(ICE)、化学ベースのニッケル水素電池パックで駆動する DC モーター、およびマルチボディ車両モデルで構成されています。そして、開発したHEVシステムの性能をシミュレーションで実証しました。
シミュレーションの結果は、このモデルが実行可能であり、MapleSimのロスレスシンボリック技術の結果、支配方程式の数が大幅に減少し、計算効率の高いシステムが得られることを示しました。このHEVモデルは、異なる走行シナリオ下での車両のハンドリング性能の設計、制御、予測に利用できます。また、感度解析、モデルリダクション、HILシミュレーションのようなリアルタイムアプリケーションにも利用可能です。
「NSERC/Toyota/Maplesoft Industrial Research Chair for Mathematics-based Modeling and DesignのJohn McPhee博士は、「MapleSimを使用すると、これらのモデルの開発時間は大幅に短縮され、システム表現は実際のシステムの物理特性にかなり近くなります。」と、述べました。
Maplesoft Engineering Solutionsは、お客様のプロジェクト要件を迅速に満たすための専門知識と技術を提供します。プロフェッショナル・サービスには、製品設計の検証と最適化、イン・ザ・ループ・シミュレーション (xILS) のためのコード開発、解析・設計計算ツール、カスタマイズされたトレーニングなどがあります。
Maplesoft Engineering Solutionsのターンキーソリューションでは、初期モデルを迅速に納品することで、低労力で自社プロジェクトのバーチャルコミッショニングを試すことができます(モデリングの専門知識は必要ありません)。