製品を仮想的に表現するMapleSimデジタルモデルの作成は、業務全体にデジタルツインを適用する最初のステップとなります。
定義: デジタルツインは、対応する物理製品の仮想モデルであり、物理製品と同じ応答をするようにリアルタイムの運用データフィードで拡張されているものです。デジタルツインは、診断、設計変更、メンテナンスのために、製品との強力なコネクションとして機能します。
デジタルツインの利用シーン
シミュレーションとデジタルツインは、どちらもデジタルモデルを用いて、システムの様々なプロセスを再現します。しかし、デジタルツインは、常に最新の仮想環境を提供するため、製品のライフサイクル全般において、より柔軟になります。デジタルツインは、研究開発から生産、モニタリング、メンテナンスに至るまで、あらゆる場面で活用できます。設計からトレーニング、マーケティングに至るまで、あらゆる部門に単一の情報源を提供することで、相乗効果を引き出します。
デジタルツインの主な用途は、次の通りです。
- Descriptive – 実物を作る前に、製品の設計と検証をする
- Informative – テストとモデルを比較するために、大規模な運用データを集める
- Predictive - 現実のさまざまなシナリオで何が起こるかを予測する
- Living Digital Twin - 製品が実世界でどのように動作し、どのように使用されるかを長期にわたって分析する
MapleSimは、製品のデジタルモデルを構築 し、オートメーション開発ソフトウェアにエクスポートすることで、簡単に運用を開始することができます。業務が拡大しても、AWS IOT TwinmakerやOracle Cloud Anomaly Detectionサービスなどのクラウドベースのデジタルツインプラットフォームと双方向に接続することで、MapleSimモデルの規模を拡大することが可能です。

モデルベース・デジタルツインの価値
MapleSimで開発されるようなモデルベースのデジタルツインは、過去の運用データのみから開発されたシミュレーションよりも精度が高く、より幅広いシナリオを表現できるため、多様なエンジニアリングタスクに利用できます。
- コンセプトの開発: 動的な挙動を予測するモデルで設計概念を設計の初期段階で実験することにより、強力な洞察が得られ、エンジニアはより多くの情報に基づいた意思決定ができるようになります。
- バーチャルコミッショニング: アクチュエータが、デューティサイクル中に直面する定常状態と過渡負荷を、最初の製造のはるか前に予測できます。これにより、過剰な設計を避けつつ、故障を回避するためにアクチュエータのサイズを適切に設定することができます。
- オンライン診断: デジタルツインを実機と並行してシミュレーションすることで、実機の経年変化による応答性の変化から、問題が発生しそうな箇所を知ることができます。
- バーチャルセンサー: デジタルツインの動的応答は、厳密な物理法則に基づいて構築されているため、特定の計算された特性を制御システムの入力として使用することで、故障したセンサーを修理できるまで置き換えたり、利用を完全に停止したりする場合があります。どちらのシナリオでも、コストを大幅に削減することができます。
- 予知保全: 機械のメンテナンススケジュールを決定する要因は数多くありますが、デジタルツインなしでは予測が困難なため、見落とされがちな要因もあります。この要因とは、デューティサイクルの変化によって生じるベアリング、ギア、モータへの動的負荷の影響です。提案されたデューティサイクルにデジタルツインを通すことで、これらの部品にかかる負荷を把握し、部品の寿命に与える影響を計算することができます。
- 製品の強化: デジタルツインによって、メーカーは、機械がどれくらいの速度(サイクル/分)で安全に動作できるか、どれくらいの重量のものを動かせるか、といった重要な質問を、エンジニアリングに差し戻すことなく行うことができます。これにより、メーカーは、より大きなイノベーションを提供し、競合他社と差別化を図ることができます。
- 販売ツール: エンジニアリング部門以外では、デジタルツインを顧客の仕様確認のために使用できます。顧客にとって、この情報は、エンジニアによるコンサルティングを必要とせずに、異なる積載量や動作条件での機械の性能を検証するのに役立ちます。