RealDomain パッケージは基礎となる数系が複素数体である Maple のデフォルトの振る舞いを Maple が「実のコンテキスト」、すなわち基礎となる数系が実数体であるというコンテキストで動作するという仮定で置き換える環境を提供します。

このパッケージには限られた個数の Maple 手続きが含まれています。このパッケージの範囲は微積分以前の数学をカバーすることを意図しており、そのレベルで出会う数式の記号操作に用いることができるいくつかのルーチンを備えています。このパッケージで用いることのできる関数の一覧は次の通りです。

RealDomain パッケージの関数はいくつかの方法でアクセスすることができます。

RealDomain パッケージのそれぞれの関数はコマンドの呼び出し手順において関数名の長い形と短い形のいずれかを用いることによりアクセスすることができます。

RealDomain パッケージの関数はコマンドの呼び出し手順で関数名の長い形を使うことによりいつでもアクセスすることができます。

たとえば、次の長い形の呼び出し手順を用いて式の余弦を実領域で求めます。

     RealDomain[cos](arguments)

関数名の短い形が with(RealDomain, function) によりあらかじめ定義されているか、パッケージのすべての関数名の短い形が with(RealDomain) により定義されているとき以外は、関数名の長い形が必要です。さらに、現在の Maple セッションで別のオブジェクトが  RealDomain パッケージの関数と同じ名前であるときは、未評価の引用符を RealDomain['function'](arguments) のように用いて RealDomain の関数にアクセスすることができます。

RealDomain パッケージの基礎となる実装はモジュールなので、RealDomain:-function の形を用いてパッケージの関数にアクセスすることもできます。 :- 表記は右辺を決して評価しないので、この形では未評価の引用符を用いる必要はありません。そしてこの表記は、 すべての状況で実行するように、ユーザが書くあらゆるプログラムから RealDomain のルーチンにアクセスするために推奨します。詳しくは module を参照して下さい。

特定の RealDomain の関数の短い形は、with(RealDomain, function) を実行した後で現行の Maple セッションで用いることができます。すべての RealDomain 関数の短い形を現行の Maple セッションで用いるには、最初に with(RealDomain) コマンドを実行します。

たとえば、次の短い形の呼出し手順を用いて実領域で式の余弦を計算します (with(RealDomain) が既に実行されたとして)。

     cos(arguments)

このパッケージのすべてのエクスポートは同じ（大域）名を持つ大域 Maple 手続きの代わりをします。たとえば、RealDomain:-sqrt は大域 sqrt 手続きの代わりをします。パッケージのエクスポートはすべてそれらが代わりをする大域手続きとは一定の違いがあります。

 1. ある手続き P の引数はまず RealDomain によりエクスポートされた手続きへのすべての呼び出しをとって代わられた大域記号への呼び出しで置き換えることにより前処理されます。

 2. そして手続きへの呼び出しは、入力におけるすべての割り当てられていない記号が実であるという仮定の下で評価されます。さらに、環境変数 _EnvSolveOverReals が値 true に設定され、 real_to_complex イベントのために特殊な数値イベントハンドラーがインストールされます。

 3. 手続きの呼び出しの結果として返される値は、検出された実でない答えを含む値のすべてを値 undefined で置き換えることにより後処理されます。

use 文の範囲の中でも、コマンド with( RealDomain ); を実行した後でも、 RealDomain パッケージの手続きに割り当てられた大域 (デフォルト) の手続きは :- 接頭辞を付けることによりなおアクセスすることが可能です。たとえば、デフォルトの sin 手続きは :-sin によりアクセスすることができます。

 RealDomain パッケージは assume(仮定) 機能とは両立しません。

simplify( sqrt( x^2 ) );

use RealDomain in simplify( sqrt( x^2 ) ) end;

evalf( (-8)^(1/3) );

use RealDomain in evalf( (-8)^(1/3) ) end;

with( RealDomain );

Warning, these protected names have been redefined and
unprotected: Im, Re, ^, arccos, arccosh, arccot, arccoth,
arccsc, arccsch, arcsec, arcsech, arcsin, arcsinh, arctan,
arctanh, cos, cosh, cot, coth, csc, csch, eval, exp, expand,
limit, ln, log, sec, sech, signum, simplify, sin, sinh,
solve, sqrt, surd, tan, tanh

:-eval( arcsin( cosh( x ) ), x = Pi / 2 ); # global evaluator applied using symbols bound in RealDomain

eval( :-arcsin( :-cosh( x ) ), x = Pi / 2 ); # the global symbols using the RealDomain evaluator

( -1 )^(1/3);

(-8)^(1/3);

ln( -1 );

ln( -2.3 );